文「美《い》い女だのう」
森「なぜ此の位《くれえ》な顔を持っていて、穢ない姿《なり》をしているでしょう、二|月《つき》しばり位《ぐれえ》で妾《めかけ》にでも出たらば好《よ》さそうなものですなア」
文「姉さん心配しちゃアいけません、此処《ここ》は立花屋と云う料理屋で、私《わし》はつい此の近辺の者で浪島文治郎と云う者だが、お前が天神様の前に雪に悩んで倒れている所へ通り掛って、お助け申して来て、介抱した効《しるし》があって漸々《よう/\》気がついて私《わし》も悦ばしゅうございますが、決して心配をなさいますなよ」
森「おい姉さん、本当に旦那が介抱してやったのだから、有難いと云って礼を云いな」
文「なぜそんな事を云うのだ、恩にかけるものじゃないわサ、もしお前さんは何処《どこ》のお方だえ」
と問われて娘は「はい」と羞《はず》かしそうに顔を上げて、
娘「私《わたくし》は本所|松倉町《まつくらちょう》二丁目に居ります者でございます」
文「お前さんは此の雪の中を何の願掛《がんがけ》に行《ゆ》くのだえ、よく/\の事だろうね」
森「姉さんなんで願掛をするんだえ、縁遠いのかえ」
文「黙って
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