に好《すき》な物でも食わせて死んだのなれば、良《い》いがと思って、死んで仕舞ってから気がついても仕方がねえ、私《わっち》が今度泣くと友達が笑って亥太郎は鬼の目に涙だってねえ」
文「嘸々《さぞ/\》御愁傷のことで、お見送りもしなかったのは残念だ、頼母《たのも》しくない」
 亥「今のお嫁入りとえんだり[#「えんだり」に傍点]にしましょう、私《わっち》共は交際《つきえゝ》が広《ひれ》いものだから裏店《うらだな》の葬《ともれ》えでありながら、強飯《こわめし》が八百人|前《めえ》というので」
 文「成程、嘸御立派でございましたろう」
 亥「それで豊島町の八右衞門《はちえもん》さんが一人の親だから立派にしろというので、組合《くみえい》の者が皆《みんな》供に立って、富士講《ふじこう》の先達《さんだつ》だの木魚講《もくぎょこう》だのが出るという騒ぎで、寺を借りて坊主が十二人出るような訳で」
 文「立派なことでございましたなア」
 亥「それも宜《よ》いが、蝋燭だの線香だの香奠《こうでん》だのと云って家《うち》の中《うち》へ一杯《いっぺい》に積んで山のようになりました、金でも持って来れば宜《い》いに、食え
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