忠「宜しゅうございます、無理に拝借致そうという訳ではございませんが、先生拝借を願います、足元を見て申上げるように思召《おぼしめ》すか知りませんが、左様な訳ではありません、此の度《たび》は困るからでございますが、手前共のような者でお役には立ちますまいが、手前にこうしてくれぬかという時は先生に御懇命を蒙《こうむ》って居りますから嫌《いや》とは申しません、はいと申します、事露顕致せば命にも係わることでもいやとは申しません、義理というものは仕方がございません、手前も義理だから先方に貸してやらなければならぬ、出来なければ仕方はございませんが、彼《あ》の時命懸けの事をして、其の上ならず貞宗の刀がお手に入《い》れば二百金ぐらいのものがあります、お金が出来なければ其の刀を拝借して質に入れましょう」
 蟠「無礼な事を云ってはならぬ、人の腰の物を借りて質に置くというのは無礼至極だろう」
 忠「そうですか、貴方の刀ではございますまい、小野庄左衞門の」
 蟠「これ/\大きな声をしてはならぬ」
 忠「お貸し下さらんければ宜しゅうございます、一旦金などを貸して下さいと云って貸して下さらぬというと来悪《きにく》く
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