は間《ま》が悪いから遠ざけまして、
 中「誠に暫く、御壮健のことは下屋敷《しもやしき》に於《おい》て聞いて居りましたが、お尋ね申すは上《かみ》へ憚《はゞか》りがありますからお尋ね申しません、いやお懐かしゅうございました」
 藤「いや面目次第もございません、一時の心得違いから屋敷を出まして、尾羽《おは》打ち枯らした身の上、斯《かゝ》る処へ中原|氏《うじ》が参ろうとは存じません、面目次第もございません」
 中「御先妻のあさという婦人がお母《っか》さまに不孝を致し、彼《あ》の婦人の為に屋敷を出る位であったが、其の妻なる者が歿《ぼっ》して二度目の妻《さい》は此の近辺に居《お》る浪島とか云う者の妹が参ったとか、それが叔母さまを大事にするという説が屋敷へも聞《きこ》え、それこれお悦び申す」
 藤「面目次第もございません」
 中「お母さまも御壮健でございますか」
 藤「はい、お母さま/\……年を取りまして……中原岡右衞門が参られました」
 母「おや/\誠に暫く、もうどうも年を取りまして身体もきかず、又目も悪くなり、お前の顔もはっきり分りません、お変りもなくまア/\立派なお身なりにお成りで、お前は若い
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