立って後家《ごけ》で通さなければならぬから、情《なさけ》を掛けて一つ寝をしないのでございます。お町は夫にお怪我がなければ良いと案じて居りますと、今度は直ぐに帰って来ました。
文「明けろ」
前のように鎖帷子を取って風呂敷に包んで寝ました。其の晩も大伴の道場へ斬込むことが出来ぬと見えてバターリッと仰向になって、又起上り、又寝て見たり、癇癖に障って寝られません。斯《か》くすること五日ばかり続けました。其の中《うち》にお町の心配は一《ひ》と通りでございません、五日目の朝でございます。
文「お母さま御機嫌宜しゅう、お町/\」
と云って居ります。藤原喜代之助も朝飯《あさはん》を食べて文治郎の家へ参り、お町の様子を文治郎に聞くと、心掛も良し、女も良し、結構だと云うから、昼飯《ひるはん》を食べて暑うございますから涼しい処へでも参ろうと云う処へ、森松が駈込んで参りまして、
森「旦那、大変でございます」
藤「どうした」
森「だって大騒ぎでございます」
藤「何《なん》だあわたゞしい」
森「表へ馬に乗った士《さむらい》が参りました」
藤「どんな姿をして来た」
森「抜身の槍で鎧《よろい》を
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