であるから、どうでも宜しいと云うと、当人が阿部忠五郎に証文を書いて貰い、印形を捺《お》して証文を置放《おきぱな》しにして帰ったが、金は返さず、当人も間《ま》が悪いと心得たか、十五日に女房お村を連れて来て、置放しに帰った切り、頓《とん》と参りません、どうしたかと思って居《お》ると、昨日《きのう》突然参ってお村を返せと云うから、お村は返さぬでもないが金を返せと云うと、いゝえ金は返されません、お村を返せと云うから、お村を返すには金を取らぬければ、なんぼ兄弟の中でも私《わし》が請人《うけにん》だから金を出せと云う争いから、狂気《きちがい》見たように猛《たけ》り立って、私《わし》を騙《かた》りだ悪党だと大声《たいせい》を発して悪口《あっこう》を言うので、門弟どもが聞入れ、師匠を騙りだの悪党だのと云っては捨置れぬと、髻《もとどり》を取って引出し打擲したと聞いたから、後《あと》でまア弱い町人を其様《そんな》にせぬでも宜《よ》いと小言を云い聞かせて置きました、何も仔細はない、怪《け》しからぬことで」
文「どうも御贔屓になりましたる先生のことを騙りなどと悪口《あっこう》するとは不埓至極な奴、大方《おお
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