が、あゝ云う処へお住いなすっては長生《ながいき》をいたしますよ、彼処《あすこ》がお下屋敷《しもやしき》で」
文「いえ/\、私《わし》は屋敷などを持つ身の上ではありません、無禄の浪人です、お母《っか》さん実はお村さんのことに就《つ》いて話があって来ましたが、お村さんは私《わし》の処へ泊めて置きましたが、お知らせ申すのが遅くなりましたから、嘸《さぞ》お案じでございましょうと存じまして」
さ「おや、お村があなたの所に、そんなら案じやしませんが、朝参りに平常《ふだん》の姿《なり》で出ました切《ぎ》り帰りませんから、方々探しても知れませんでしたが、貴方様の所へ往《い》っていると知れゝば着替えでも届けるものを、何時《いつ》までもお置きなすって下さいまし、安心して居りますから」
文「いやそう云う訳ではない、お母さんが聞いたら嘸お腹立でしょうが、実は芝口の紀の善の番頭友之助がお村さんと昨年来深くなり、其の友之助もお村さんゆえ多くの金を遣い果し、お村さんも借財が出来、互いに若い同士で心得違いをやって、実は昨夜牛屋の雁木で心中する所を、計らず私《わし》が助けたから、直ぐにお村さんばかり連れて来ようと
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