ますよ」
 村「若旦那お休みなさいよう」
 蟠「そんなことを云って、まア鬼のいない中《うち》の洗濯じゃアないか……なア安兵衞、兄貴は分らぬてえものだ、此の[#「此の」は底本では「此《この》の」と「の」が重複]どうも脇差を弟に内証《ないしょう》で時々ズーッと鞘を払い、打粉を振って磨き、又納め、袋へ入れて楽しんでいるからひどい、今日は留守だから引摺り出したが、私《わし》に見せぬで隠して居《お》るのはひどい」
 安「何時《いつ》の間にお手に入れたか、これは大先生《おおせんせい》より貴方のお持ち遊ばした方が宜しい」
 蟠「兄貴は分らぬ、隠して置くはどうも訝《おか》しい、それに何《な》ぜ此の位の良い脇差に…小柄がないね」
 安「これは何《いず》れ取りあわせて拵《こしら》えるのでしょう」
 村「早くお休みなさいよ、お願いでございますよ、お母《ふくろ》も眠がって居りますから旦那」
 と云うのが庭へ響きます女の声、はア此処《こゝ》にいるのはお村|母子《おやこ》だが、此奴《こいつ》を逃してはならぬと藤四郎吉光の鞘を払って物をも云わずつか/\と来て、誰《たれ》かと眼を着けるとお村ですから「友之助ならば斯《かく》の如く」とポーンと足を斬りました。
 村「あゝ人殺し」
 と言いながら前へ倒れる。其の刀でえいと斬るとバラリッとお母《ふくろ》の首が落ちました。随竜垣に手を掛けて土庇《どびさし》の上へ飛上って、文治郎|鍔元《つばもと》へ垂れる血《のり》を振《ふる》いながら下をこう見ると、腕が良いのに切物《きれもの》が良いから、すぱり、きゃっと云うばかりで何《なん》の事か奥では酒を飲んでいて分りません。
 蟠「何《なん》だ/\」
 村「人殺し/\」
 安「それは飛んだこと」
 とひょろ/\よろけながら和田原安兵衞が来て、
 安「どう遊ばした、お母様《ふくろさま》も怪《け》しからぬ……何者でござる、確《しっか》り遊ばして」
 と言いながらお村を抱き起そうとする時、後《うしろ》から飛下りながら文治郎がプツリッと拝み討ちに斬りますと、脳をかすり耳を斬落《きりおと》し、肩へ深く斬り込みましたから、あっと仰様《のけざま》に安兵衞が倒れました。蟠作は賊ありと知って討とうと思いましたが、慌《あわ》てる時は往《ゆ》かぬもので、剣術の代稽古をもする位だから、刀を持って出れば宜《よ》いに、慌てゝ居りますから心得のない
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