騙り/\と金切声で言うと、ばら/\と内弟子が三四人来て、不埓至極な奴、先生を騙りなどと悪口雑言《あっこうぞうごん》をしては捨置かれぬ、出ろと襟髪《えりがみ》を取って腕を捕《つか》まえて門前へ引摺り出し、打擲して、前に申し上げた通り割下水の溝《みぞ》へ倒《さか》さまに突込《つきこ》んで、踏んだり蹴たり、半死半生《はんしはんしょう》息も絶え/″\になりましたが、口惜しいから、
 友「さア殺せ、さア殺して仕舞え/\」
 と云う声、実に悲鳴を放って苦し[#「し」は底本では欠如]んでいるのでございます。処へ文治郎通り掛ったが、母が同道でございますから、何分《なにぶん》にも問うことも出来ません。宅へ帰って森松に耳こすりして、全く友之助が蟠龍軒の為に酷《ひど》い目に遇《あ》っているなら、助けないで彼《あ》のまゝにして置けば必ず死ぬから、早く見て来いと云うから、森松は飛出して割下水へ来て見ると、四辺《あたり》はひっそりとしていたけれども、其の者は溝《どぶ》から這上《はいあが》って這うようにして彼方《あっち》へ行った此方《こっち》へ行ったと人の話を聞いて、だん/\跡を追って吾妻橋へ掛りますと、ポツリ/\大粒の雨が顔に当ります。ピュウ/\と筑波下《つくばおろ》しが吹き、往来はすこし止りましたが、友之助はびしょ濡《ぬれ》の泥だらけ、元結《もとゆい》ははじけて散乱髪《さんばらがみ》、面部は耳の脇から血が流れ、ズル/\した姿《なり》で橋の欄干に取付き、
 友「口惜しい、畜生め、町人と思って打ち打擲して、人を半死半生に殺しゃアがったな、あゝ己は口惜しい、己は此の橋から飛込んで三日|経《たゝ》ぬ中《うち》に皆《みんな》取殺すからそう思え、エー口惜しい」
 と狂気致したようになって欄干に手を掛けると、バタ/\跡から来たは森松、
 森「友さん/\おい仕様がねえ、友さん確《しっ》かりしねえ」
 友「止めてはいけません、何卒《どうぞ》離しておくんなさい、生甲斐《いきがい》のない身体、殺しておくんなさい」
 森「何を云うのだ、お前《めえ》能く考え違《ちげ》えをしてはいかねえ、お前《めえ》狼狽《うろた》えちゃアいけねえ、旦那が心配しているんだ、旦那は此の節《せつ》外へ出られねえから己に行って見ろというから来たのだ」
 友「三日|経《たゝ》ぬ中《うち》に取殺します」
 森「そんなことを云ったって仕様がねえ、能
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