っ》てくれと云うので、お前は業平橋の文治郎と云う奴を頼んで掛合いに来た其の時、私は遣《や》ることは出来ねえと云ったら、文治郎と云う奴は友之助の所へお村を遣らなければ縊殺《くびりころ》すと云って理不尽に咽喉《のど》を締めて、苦しくって仕方がねえから、はいと云ったが、其の時の掛合にのう、お母《っかあ》には月々五両ずつ小遣《こづかい》を贈ろうと云ったが、毎月々々《まいげつ/\》送ったことがあるか、やれ家《うち》を越したの、やれ品物を仕入れるの、店を造作《ぞうさく》するのと云って丁度金を送ったことはありゃアしねえ、大事な一人娘を何故親に無沙汰で、此方様《こちらさま》へ来て博奕《ばくち》同様な賭碁に書入れた、三百両と云う大金でお前は碁を打って楽しんだろうが、親に無沙汰で書入れて仕舞って、此方様だから宜《い》い、お母《ふくろ》ぐるみ引取るから心配するなと仰しゃるが、若し悪い者の手に掛れば女郎に売られるか知れやしねえ、太《ふて》い奴だ、縁切《えんきり》で遣った娘ではねえ、嫁に遣れば姑《しゅうと》だよ、己《おれ》に一応の話もしねえで、沙汰なしに金の抵当《かた》に書入れられて溜《たま》るものか、手前《てめえ》のような奴に何《なん》と言ったって再び娘は遣りゃアしねえからそう思いなよ」
友「お母《っかあ》それはねお前が腹を立つのは尤《もっと》もだけれども、是には種々《いろ/\》な深い訳のあることで、私も此方様へ二月からお出入して、初めはやれこれ云って有難い花主《とくい》と思って、此様《こんな》に人を欺《だま》すようなことをなさろうとは思わなかったが、後月《あとげつ》来たら碁を打て/\と先生が勧めるから、お相手の積りで碁を打って、初めは私に飴を食わせ、勝たして置いて賭碁をしろと仰しゃり、向うの企《たく》みとは知らず、洒落と思ってうっかり証文を書いたのが私の過《あやま》りだ、過りだけれども金は百両しか借りはしない、だが三百両でなければお村は返さないと仰しゃるから、どんなにも才覚してお村を取返しに来ようし、後《あと》でお前に話をするからお村だけは何卒《どうぞ》私の方へ返して下さい」
母「誰が手前《てめえ》に返す奴があるものか……これお村、手前《てめえ》もこんな不人情な奴にくっついていたって仕様がねえ、諦めの着くように判然《はっきり》と云って仕舞いなよう、愚図々々するから此奴《こいつ》がこけ
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