いさつ》は出来ません……置いては悪いと云う、紀伊國屋が来ればと行《ゆ》く……成程これは悪い、あッと切れて居《お》ることを知りませんでした、これはどうも大ごと二十五|目《もく》と云う仕事、これは弱りましたな……斯《こ》う遣《や》ると向うへ登ると、えゝ紀伊國と斯うやる、紀伊國屋と突くと向うが紀伊國と跳上《はねあ》げられる、弱るね、紀伊國屋と斯う突くと向うが紀伊國とやる」
友「はゝゝゝどうも紀伊國屋|尽《づく》しの碁は初めて見ました」
蟠「紀伊國屋は碁は好《すき》だそうだな」
友「へえ私《わたくし》は碁で十六|度《たび》失錯《しくじり》ました」
蟠「大層失錯りましたね」
友「御膳より好で、目の先へ斯う始終碁が並んでいる様で、商《あきない》の邪魔になりますからピッタリ止《や》めました」
蟠「どうだ、阿部は下手の横好きで舎弟に七|目《もく》負けたが、どうだ阿部と一石《いっせき》やりなさい」
蟠作「紀伊國屋遣りなさい、自分の身代《しんだい》になれば碁に勝っても宜《い》いじゃアないか、よう遣りなさい」
友「じゃアお相手致しましょうか」
と素《もと》より好きだから紀伊國屋は心嬉しく、
阿「あれさ黒はいかぬ、白を持ちな」
友「どう致しまして」
阿「手前《てまい》は白を持ったことはない、お前は上手らしいから私《わし》は黒が宜い」
友「じゃア参りましょう」
とパチリ/\と根が好だから夢中になって二番ばかり打ちますと、阿部はばた/\と負けた。
蟠「どうしたの」
阿「へえ何《ど》うも紀伊國屋強うございます」
蟠「勝《かっ》たか」
友「阿部様はほんの飴《あめ》でしょう」
阿「なか/\飴でない」
蟠「どうして阿部はとてもいかぬ、へぼだ、へぼで飴を食わせることは出来ぬ」
阿「じゃア斯《こ》うしましょう、張合《はりあい》になりませんから負けたら大きいもので一杯グーッと飲んではどうでしょう」
蟠「狡《ずる》い事を考えるな、阿部は自分が酒が飲みたいものだから」
阿「そうでない、さア遣りましょう」
蟠「これ/\友之助、阿部はむかっ腹を立てゝ面白いから一両ばかり賭《か》けて遣りなさい、慾張って居《お》るから取られると額《ひたえ》へ筋を出して面白いから、阿部、紀伊國屋と一両賭けて賭碁《かけご》は何《ど》うだ」
阿「どうも勝って来たものだから直《すぐ》に附込《つ
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