配なさるのでしょう、宜しい、お詫に出ましょう、かやがお母様の御意《ぎょい》に叶《かな》って居りますから、かやも同道致してお詫に上りましょう」
と直ぐに羽織を引掛《ひきか》け、一刀|帯《さ》して女房おかやを連れ、文治郎の台所口から、
喜「はい御免なさい」
森「藤原さんですか、お母さんが膳を転覆《ひっくりけえ》して旦那もお困りですが、お母さんは※[#「※」は「箍」で「てへん」のかわりに「きへん」をあてる、151−7]《たが》がゆるんだのだ」
喜「これ大きな声をしてはいけません」
と母親の居間へ通り、
喜「お母様御機嫌宜しゅう」
母「おやお揃《そろ》いで」
喜「只今承わりましたが、文治郎殿がお失策《しくじり》で中々お聞入れがないから、手前に代ってお詫をしてくれと、何事にも恐れぬ文治郎殿が驚かれ、顔色《かおいろ》変えて涙を浮べ頼みに参ったから直様《すぐさま》出ましたが、どうか御了簡遊ばして、御飯を召上るように願います」
母「決して詫などをして下さるな」
か「お母様、そんなことを御意遊さずに御免下さい、彼《あ》の文治郎さまの御気性でお驚き遊ばしたのはよく/\のことでございますから、何卒《どうぞ》お許し遊ばして、御飯を召上って下さいまし」
母「いや喫《た》べんと云ったら二|言《ごん》とは申しません」
喜「宜しい、あなたの御気性で、食を止《とゞ》め餓死しても文治郎殿の為に遊ばすと云うのは、子が可愛いからでしょうが、何《ど》うか文治郎殿に代ってお詫を申上げます、お赦《ゆる》し下さい」
母「いゝえ、お置き下さい」
か「どうか私《わたくし》に免じて御飯を食《あが》って下さいまし」
母「なりません、侑《すゝ》めると肯《き》きません」
喜「それではどうも致し方がない、死を極めておいでなすって見れば仕方がないによって、手前此の場で割腹致しお先供《さきとも》を致す」
か「私《わたくし》も供《とも》にお先供致します」
と云いながら鞘《さや》を払って已《すで》に斯《こ》うと覚悟致しますから、
母「まアお待ちなさい」
喜「いゝえ待ちません」
母「これかや、まア待ちな……命を捨てゝ詫ことをして下さる、赦し難い奴なれども、お前方両人に免じて一とたびは赦しますから、文治郎をこれへお呼び下さい」
喜「なに、御勘弁下さると、それは有難い、文治郎殿、お詫ごとが叶《かな
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