も起しはしないかと思って、それが心配だ」
 村「彼様《あん》なことを仰《おっし》ゃる、悋気などはございません、何時《いつ》でも往って来い、彼様《あゝ》やって心中する処を旦那のお蔭で助かったのだから、浪島の旦那がお前を妾《てかけ》に遣《よこ》せと仰ゃれば直ぐに上げると云って居ります」
 と一寸《ちょっと》云う口も商売柄だけに愛敬に色気を含んで居ります。まさか友之助がお村を妾《めかけ》にやるとも申しますまいが、自然と云いように色気があるので、何《ど》んなものでも酒を飲むと少しは気が狂って来るものと見え、文治もお村を美《い》い女だと思った心が失せないか、
 文「手前と斯うやって酒を飲むのが一番いゝ心持だが、若《も》し己が冗談を云いかけた時は手前は何《ど》うする」
 村「おや旦那旨いことばかり仰《おっし》ゃって私などに冗談を仰ゃる気遣《きづか》いはありませんが、本当に旦那様の仰ゃることなら私は死んでも宜しい、有難いことだと思って居ります」
 文「それだから手前は世辞を云ってはいかんと云うことよ」
 村「お世辞でも何《なん》でもありません、有難いことゝ思っても仕方がないが、旦那様のような凛々《りゝ》しくって優しいお方はありませんよ」
 文「それそう云うことを云うから男が迷うのだ、罪作りな女だのう」
 と常にない文治郎は微酔《ほろよい》機嫌《きげん》で、お村の膝へ手をつきますから、お村は胸がどき/\して、平常《ふだん》からお村は文治郎に惚れて居りましたが、何時《いつ》でも文治はきりりっとしているから云い寄る術《すべ》もなくっていたのが、常に変って色めきました文治郎の様子に、
 村「旦那、本当に左様《そう》なら私は死んでも宜《よ》うございますよ」
 と云いながら窃《そ》っと文治郎の手を下へ置いて立上り、外を覘《のぞ》いて見てぴったり入《いり》□□□□□□□、□□□□□□□□、□□□□□□閉《た》て、薄暗くなった時、文治の側へぴったり坐って、
 村「旦那、貴方は本当に私の様なものをそう云って下されば、私は友之助に棄てられても本望《ほんもう》でございますが、其の時は貴方私のような者でも置いて下さいますか」
 と文治郎の□□□□□□□□□□□が、こんな美しい女に手を取られて凭《もた》れ掛《かゝ》られては何《ど》んな者でもでれすけになりますが、文治郎はにやりと笑い、お村の手を払って立上り
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