れで僅《わず》か五両ばかりの小遣を貰って私が暮されると思いますかえ、お前さんは柳橋の相場を御存じがありませんからサ、朝戸を開ければ会の手拭の五六本も投げ込《こま》れて交際《つきあい》の張る事は知らないのだろう、お前さんじゃア分らないから、分る者をおよこしなさい、お村は直ぐに帰しておくれ」
文「だがお母《っか》さん、五両と極めても当人が店を出して繁昌すれば、十両でも廿両でも多く上げられるようになるのが友之助の仕合せと申すもの、無理に二人の中を裂いて、又駈出して身でも投げると、却《かえ》ってお前さんの心配にもなるから、昨夜《ゆうべ》牛屋の雁木で心中したと思って諦めて下さい」
さ「死んで見れば諦めるかもしれねえが、あのおむらが生きている中《うち》は上げられません、七歳《なゝつ》のときに金を出して貰い、芸を仕込んで今になってポーンと取られて堪《たま》るものかね、出来ません、お帰《けえ》しなすって下さい、いけ太《ぶて》い餓鬼だ、私を棄てゝ心中するなんて、そんな奴なら了簡があります、愚図々々すれば女郎《じょうろ》にでも打《たゝ》き売って金にして埋合《うめあわ》せをするのだ」
文「それじゃア私《わし》の顔に障るからどうか私《わし》に面じて」
さ「出来ませんよ、お前さんなんざア掛合をしらねえ小僧子《こぞっこ》だア、青二才《あおにせい》だ、もっと年を取った者をお遣《よこ》し、何《なん》だ青二才の癖に、何だ私の目から見りゃアお前《めえ》なんざア雛鳥《ひよっこ》だア、卵の殻が尻《けつ》に付いてらア、直ぐに帰《けえ》してくんな、帰《けえ》しようが遅いと了簡があるよ、親に無沙汰で何故娘を一晩でも泊めた、その廉《かど》で勾引《かどわかし》にするからそう思え」
森「旦那黙っておいでなせえ、此の婆《ばゞあ》こん畜生、今聞いていりゃア勾引だ、誰の事を勾引と云やアがるんだ、娘の命を助けて話を付けてやるに勾引たア何《なん》だ」
さ「ぐず/\云わずに黙って引込《ひっこ》んでいろ、兵六玉屁子助《ひょうろくだまへごすけ》め」
森「おや此の畜生屁子助たアなんだ」
文「これさ黙っていろ、それでは何《ど》うあっても聞入れんか」
さ「肯《き》かれなけりゃアどうするのだ」
文「肯かれんければ斯《こ》うする」
と云いながら、婆《ばゞあ》の胸ぐらを取ってギューッと締めましたから、
婆「あ痛《い》た/\
前へ
次へ
全161ページ中60ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング