》を囲炉裡《ゐろり》にかけて玉子を二ツ三ツポン/\と中に入れましたが早速《さつそく》玉子酒《たまござけ》が出来《でき》ました。女「此湯呑《このゆのみ》でお上《あが》んなさいまし、お酌《しやく》をしませう。○「久《ひさ》し振《ぶ》りであなたにお目にかゝつてそのお酌《しやく》で頂《いたゞ》くのはお祖師様《そしさま》の引《ひ》き合《あは》せでございませう、イエたんとは頂《いたゞ》きません。女「さぞくたびれたでございませう、此次《このつぎ》の座敷《ざしき》はきたなくつて狭《せま》うございますが、蒲団《ふとん》の皮《かは》も取《と》り替《か》へたばかりでまだ垢《あか》もたんと附《つ》きませんから、緩《ゆつ》くりお休みなさいまし、それに以前《もと》吉原《よしはら》で一遍《いつぺん》でもあなたの所へ出たことがあるんですから、良人《うちのひと》に知れると悋気《りんき》ではありませんが、厭《いや》な顔でもされるとあなたも御迷惑《ごめいわく》でございませうから内々《ない/\》で。○「へえーいえもうやきもちを焼《や》かれる雁首《がんくび》でもありませんが、人情《にんじやう》でございますから、まるつきり見ず知らずで御厄介《ごやくかい》になります。女「お休みなさいまし。○「それでは御免《ごめん》下《くだ》さい。次《つぎ》の間《ま》に行《ゆ》く。あとに女《をんな》は亭主《ていしゆ》が帰《かへ》つて来《き》たならば飲《の》ませようと思つて買つて置いた酒をお客に飲《の》ましてしまつたのですから、買つて置かうと糸立《いとだて》を巻《ま》いて手拭《てぬぐひ》を冠《かむ》り、藁雪沓《わらかんじき》を穿《は》きまして徳利《とくり》を持《も》つて出かけました。入《い》れ替《かは》つて帰《かへ》つて来《き》たのは熊《くま》の膏薬《かうやく》の伝次郎《でんじらう》、やち草《ぐさ》で編《あ》んだ笠《かさ》を冠《かむ》り狸《たぬき》の毛皮《けがは》の袖《そで》なしを被《き》て、糧切《まぎり》は藤《ふぢ》づるで鞘《さや》が出来《でき》てゐる。これを腰にぶらさげ熊《くま》の膏薬《かうやく》の入《はい》つた箱を斜《はす》に背負《せお》ひ鉄雪沓《てつかんじき》を穿《は》いて、伝「オイおくま、オイお熊《くま》どこへ行《い》つたんだな、おくま、手水場《てうづば》か、めつぽふけえ降《ふ》りやアがる、焚火《たきび》をしたまゝ居《ゐ
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