を打って溝《どぶ》の縁へ投げ付けられるを、左の方《ほう》から時藏相助が打ってかゝるを、孝助はヒラリと体《からだ》を引外《ひきはず》し、腰に差《さし》たる真鍮巻の木刀で相助の尻の辺《あたり》をドンと打《ぶ》つ。相助|打《ぶ》たれて気が逆上《のぼ》せ上《あが》るほど痛く、眼も眩《くら》み足もすわらず、ヒョロ/\と遁出《にげだ》し溝《どぶ》へ駆け込む。時藏も打《ぶ》たれて同じく溝へ落ちたのを見て、
孝「やい、何をしやアがるのだ、サア何奴《どいつ》でも此奴《こいつ》でも来い飯島の家来には死んだ者は一|疋《ぴき》も居ねえぞ、お印物《しるしもの》の提灯を燃やしてしまって、殿様に申訳《もうしわけ》がないぞ」
飯「まア/\もう宜《よろ》しい、心配するな」
孝「ヘイ、これは殿様どうしてこゝへ、私《わたくし》がこんなに喧嘩をしたのを御覧遊ばして、又私が失錯《しくじ》るのですかなア」
飯「相川の方《ほう》も用事が済んだから立帰《たちかえ》って来たところ、此の騒ぎ、憎い奴と思い、見ていて手前が負けそうなら己《おれ》が出て加勢をしようと思っていたが、貴様の力で追い散らして先《ま》ず宜《よ》かった、焼落《やけお》
前へ 次へ
全308ページ中108ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング