《いやき》になり、話が縺《もつ》れて、今度は到頭《とうとう》孝助が相川の養子になる事に極《きま》り、今日結納の取交《とりかわ》せだとよ、向うでは草履取でさえ欲しがるところだから、手前なれば真鍮《しんちゅう》でも二本さす身だから、きっと宜《よ》かったに違いはない、孝助は憎い奴だ」
相「なんですと、孝助が養子になると、憎《にッ》こい奴でごじいます、人の恋路《こいじ》の邪魔をすればッて、私《わたくし》が盗人根性があって、お負けに御主人の頭を打《にや》すと、何時《いつ》私が御主人の頭を打しました」
源「己《おれ》に理窟を云っても仕方がない」
相「残念、腹が立ちますよ、憎《にッ》こい孝助だ。只《たゞ》置きましねえ」
源「喧嘩しろ/\」
相「喧嘩しては叶《かな》いましねえ、彼奴《あいつ》は剣術《きんじゅつ》が免許《みんきょ》だから剣術は迚《とて》も及びましねえ」
源「それじゃア田中《たなか》の中間《ちゅうげん》の喧嘩の龜藏《かめぞう》という奴で、身体中|疵《きず》だらけの奴がいるだろう、彼《あれ》と藤田《ふじた》の時藏《ときぞう》と両人《ふたり》に鼻薬をやって頼み、貴様と三人で、明日《あした》孝助が相川の屋敷から一人で出て来る所を、大曲りで打殺《ぶちころ》しても構わないから、ぽか/\擲《なぐ》りにして川へ投《ほう》りこめ」
相「殺すのは可愛相《かわいそう》だが、打《にや》してやりてえなア、だが喧嘩をした事が知れゝば何《ど》うなりますか」
源「そうさ、喧嘩をした事が知れゝば、己《おれ》が兄上にそう云うと、兄上は屹度《きっと》不届《ふとゞき》な奴、相助を暇《いとま》にしてしまうと仰しゃってお暇に成るだろう」
相「お暇に成っては詰《つま》りましねえ、止《よ》しましょう」
源「だがのう、此方《こちら》で貴様に暇を出せば、隣でも義理だから孝助に暇を出すに違いない、彼奴《あいつ》が暇になれば相川でも孝助は里がないから養子に貰う気遣《きづか》いはない、其の内此方では手前を先へ呼返《よびかえ》して相川へ養子にやる積《つもり》だ」
相「誠にお前様《めえさま》、御親切が恐れ入り奉ります」
というから、源次郎は懐中より金子《きんす》若干《いくらか》を取出し、
源「金子をやるから龜藏たちと一杯呑んでくれ」
相「これははや金子《けんす》まで、これ戴いてはすみましねえ、折角の思召《おぼしめ》しだから頂戴
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