ても大丈夫でございます、富山《とやま》の薬屋《くすりや》は風呂敷《ふろしき》を前で本当《ほんたう》に結んでは居《を》りませぬ、追剥《おひはぎ》にでも逢《あ》ふと、直《すぐ》に風呂敷《ふろしき》の結び目がずつと抜《ぬ》けてしまつて、後《うしろ》へ荷物を投《はふ》り出し、直《すぐ》と匕首《あひくち》を抜《ぬ》いて追剥《おひはぎ》と闘《たゝか》ふくらゐでなければ、迚《とて》も薬屋《くすりや》は出来《でき》ませぬ、私《わたし》が行《ゆ》けば大丈夫でございます、御安心なさい」「さうかえ、足は大丈夫かえ」「足は大丈夫でございます、車を引いてゐる位《くらゐ》でございますから」と云《い》ふので、是《これ》から支度《したく》をしまして、両人《りやうにん》で出かけましたが、何《なん》でも歩かなければ実地《じつち》は履《ふ》めませぬ。東京《とうきやう》の内《うち》はうるさいから車に乗つて、千住掃部宿《せんぢうかもんじゆく》で車より下《お》りて、是《これ》から上州《じやうしう》沼田《ぬまた》へ捜《さが》しに行《ゆ》きました。
[#地付き](拠若林※[#「王+甘」、第4水準2−80−65]蔵筆記)



底本:「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」筑摩書房
   2001(平成13)年8月25日初版第1刷発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2006年11月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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