塩原多助旅日記
三遊亭円朝
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)是《これ》は
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|番地《ばんち》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)拠若林※[#「王+甘」、第4水準2−80−65]蔵筆記
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
いや是《これ》は若林先生《わかばやしせんせい》、さア此方《こちら》へお這入《はい》んなさい。どうも久《ひさ》し振《ぶり》でお目《め》に掛《かゝ》りました。裏猿楽町《うらさるがくちやう》二|番地《ばんち》へ御転住《ごてんぢう》になつたといふ事でございますから、一寸《ちよつと》お家《いへ》見舞《みまひ》にあがるんですが、どうも何《なに》も貴方《あなた》のお座敷《ざしき》へ出すやうな話がないので、つい御無沙汰《ごぶさた》致《いた》しました。時に斯《か》ういふ話があるんです。是《これ》は貴方《あなた》も御承知《ごしようち》の石切河岸《いしきりがし》にゐた故人《こじん》柴田是真翁《しばたぜしんをう》の処《ところ》へ私《わたくし》が行《い》つて聞いた話ですが、是《これ》は可笑《をか》しいて……私《わたくし》が何処《どこ》へ行《い》つても口馴《くちな》れてお喋《しやべ》りをするのは御承知《ごしようち》の塩原多助《しほばらたすけ》の伝《でん》だが、此《こ》の多助《たすけ》の伝《でん》は是真翁《ぜしんをう》が教へてくれたのが初まりだが、可笑《をか》しいぢやありませぬか。どういふ訳《わけ》かといふと、其頃《そのころ》私《わたくし》が怪談《くわいだん》の話の種子《たね》を調べようと思つて、方々《はう/″\》へ行《い》つて怪談《くわいだん》の種子《たね》を買出《かひだ》したと云《い》ふのは、私《わたくし》の家《うち》に百|幅幽霊《ぷくいうれい》の掛物《かけもの》があるから、百|怪談《くわいだん》といふものを拵《こしら》へて話したいと思ふ時分《じぶん》の事で、其頃《そのころ》はまだ世の中が開《ひら》けないで、怪談《くわいだん》の話の売《う》れる時分《じぶん》だから、種子《たね》を探して歩いた。或
次へ
全13ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング