。僕は何処《どこ》までも小説のつもりで話してゐるのだから、いろいろ本当の名前を挙《あ》げては悪いのだが、僕は自己小説家だから云ひますが、読売新聞社が其《そ》の晩に電話を掛けて呉《く》れて、翌朝の新聞に何行かの僕の釈明を載せて呉れたことは非常にありがたく思ふ。何年か前、やはり鎌倉で、僕の総領の失策から、新聞に書かれたことがあつて弱つたことがあるが、あの時の鎌倉の署長さんは、たしか吉田さんと云つたと思ふが、僕としては精一杯お詫《わ》びをした筈であり、子供は尋常六年生だつたが、もうあと半月そこ/\で卒業になる場合だから、鎌倉へ置いて悪いと云ふならば、あしたにも郷里へ帰す、何んな責任でも帯びるから、いろ/\な書類の手続きだけは勘弁して下さいと、男泣きに泣いて涙を流してお願ひした筈だつたのだが、何うもお役所といふものは、我々の考へてゐるやうなわけにはゆかないものらしく、何もわけの分らない十三歳の男の子に、拇印《ぼいん》を押させ――そんな子の拇印なぞが、それ程役所には大事なものか知ら。が、それは余談だが、それで雑誌「改造」に「不良児」といふ、それこそは事実の記録なんですが、それを書き、その上に神奈
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