いえらい。」
と、頻《しき》りに画板を褒め立てますから、如何《どう》した事かと行《いっ》て見ますと、こわいかに、昨日まで四角であった画板わ、今朝《けさ》わ八角に成って、意気揚々と歩行《ある》いております。
四角の角々を切り落せば、角の数が倍になって、八角に成るのわ当然《あたりまえ》、しかもそれわ自分の所業《しわざ》であるのに、そうとわ心付かぬ三角定木、驚いたの驚かないの!
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(三)ヒヤーこりゃ如何《どう》じゃ。アノ四角|奴《め》、一夜の中《うち》に八角に成りよった。この分でわまた明日わ、十角や二十角にも成るだろう、こりゃ所詮《しょせん》叶《かな》わぬわイ。
[#ここで字下げ終わり]
と、とうとう兜《かぶと》を脱いで降参しましたとわ、身のほど知らぬ大白痴《おおたわけ》。
底本:「日本児童文学名作集(上)」岩波文庫、岩波書店
1994(平成6)年2月16日第1刷発行
底本の親本:「小波お伽百話」博文館
1911(明治44)年1月初版発行
初出:「幼年雑誌」博文館
1894(明治27)年10月号
※本作品は、作者が提唱した、発音どおりの仮名遣い「お伽仮名」によっている。1900(明治33)年から2年間、巖谷小波は、ベルリン大学東洋語学校で日本語を教えたが、その際の経験から、日本語の仮名遣いは煩雑過ぎると考え、お伽噺を発音通りの仮名遣いで表記するようになった。初出時は歴史的仮名遣いで書かれていた本作品も、底本の親本に収録されるに際して、書きあらためられた。
入力:hongming
校正:門田裕志
2001年12月22日公開
2005年11月27日修正
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