に行ったか見当りません。いいあんばいだと、二人は真暗な中をドシドシ逃げてゆきました。
 動物園の見世物の主人はそんなことは知りません。
 二人を檻に入れますとすぐに宿屋に帰って、自分の手下の中《うち》で画《え》をよく書く者に、ヒョロ長いヒョロ子の姿とブタブタした豚吉の姿を描かせました。それを夜の明けぬうちに見世物小屋の上にあげさせました。それを眺めて動物園の主人はニコニコして、
「これでいいこれでいい。サアみんな寝ろ。あしたは見物が一パイに来るに違いないから、みんな早く起きて来るんだぞ」
 あくる朝になりますと、見世物小舎の主人は、前の晩に豚吉夫婦を捕えて檻の中へ入れたり何かしたものですから疲れたと見えまして、たいそう朝寝をして眼を覚ましましたが、見ると雇人《やといにん》もまだみんなグーグーと睡っています。それを一人一人に起こして、揃って御飯を喰べて、見世物小舎の前に来て見ますと、この小舎の前はもう人間で中に這入れない位です。その人々は皆口々に、
「早く入り口をあけろあけろ」
「あの看板に出ている珍らしい夫婦を見せろ見せろ」
 と怒鳴っています。それを早起きして来た動物の番人が一生懸命
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