い。そっとたたいても、たまらないいい音がするのだから。湖の底に沈んでいらっしゃるお父様の耳までもきっと達《とど》くに違いない」
と思っていたのでした。その鐘が鳴らなかったのですから、ルルは不思議でなりませんでした。
「どうしたら本当に鳴る鐘が作れるのであろう」
と考えましたが、それもルルにはわかりませんでした。
ルルは泣いても泣いても尽きない程泣きました。ミミも一所に泣きました。こうして兄妹は泣きながら家《うち》に帰って、泣きながら抱き合って寝床に這入りました。
その夜《よ》のこと……。ルルはひとりおき上りまして、泣き疲れてスヤスヤ睡《ねむ》っている妹の頬にソッと接吻をして、家《うち》を出ました。只《た》だ一人で湖のふちへ来て、真黒く濁った水の底深く沈んでしまいました。
村の人が心配していた悲しいことが、とうとう来たのです。ミミは一人ポッチになってしまったのです。
けれども、ミミはどうしてあの優しい兄さんのルルに別れることが出来ましょう。
村の人がどんなに親切に慰めても、ミミは只《た》だ泣いてばかりいました。そうして朝から晩まで湖のふちへ来て、死んだ兄さんがもしや浮き上り
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