たしかであったという。なおこの他に末永茂世氏が春吉に住んでいたというが、この人に学んだかどうかは詳でない。
福岡の人林大寿氏は奇特の人で、只圓翁の自筆の短冊数十葉を蒐集し、同翁の門下生に分与しようとされたものが現在故あって一纏めにして古賀得四郎氏の手許に預けられている。古賀氏の尽力で、表装されて只圓翁肉筆の歌集として世に残る筈である。翁の歌風を知るには誠に便宜と思うからその和歌を左に掲げておく。
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行路荻 (八十七歳時代)
夕附日荻のはこしにかたむきて
ふく風さむしのべのかよひ路
帰雁
桜さくおぼろ月夜にかりがねの
かへるとこよやいかにのとけき
河暮春 (八十八歳時代)
ちる花もはるもながれてゆく河に
なにをかへるのひとりなくらん
河暮春
大井河花のわかれをしとふまに
はるは流れて暮にけるかな
雉
春雨のふりてはれぬるやま畑の
すゝしろかくれ雉子なくなり
寒松風
枯はてしこすへはしらぬ夜あらしを
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