帰り途に押しかけて、出会い頭に馬を乗りかけて怪我をさせましたので、妾はその死骸を先生の御門の処まで持って来て、放り出して逃げて行ったので御座います。
妾はそれから又もや紅木大臣のお邸敷《やしき》へ、騒ぎに紛れて忍び入って、美紅姫の室《へや》に這入りました。見ると美紅姫はどうした訳か、気絶して床の上に倒れたまま、誰も気付かずにおります。妾はよい都合と喜びまして、兼《か》ねてから髪毛《かみ》の中に隠しておいた宝蛇を、美紅姫の懐に押し込みました。これが今のように、美紅と美留藻と一所になってわからなくなるはじめとは、その時夢にも思い当りませんでした。
宝蛇が美紅姫の胸から血を吸い初めますと、不思議や妾は自分の身体《からだ》の血が消え失せるように思いまして、急に眼が眩んで立っている事が出来ずに、床の上にたおれました。
妾はその時夢中になって藻掻きました。そして自分が宝蛇に噛まれて血を吸われていると思いましたから、一生懸命になって自分の胸を掻きまわして、掴み散らしますと、やがて急に胸の苦しみが除《と》れてしまいましたから、ほっと一息安心をしました。が、それと一所にやっと正気になりましたから、
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