したが、やがて悲し気に低頭《うなだ》れて――
「妾はもとは桃色の花が大好きで御座いましたが、今は青いのが大好きになりました」
 とこう御返事を申し上げました。すると王様は暫くの間何のお言葉もなく、棒のように突立っておいでになる様子ですから不思議に思って、姫はヒョイとお顔を見上げますと、こは如何に。王の顔はいつの間にか恐ろしい青鬼の顔に変っていました。
 姫は気絶する程驚いて、そのままあとも見返らずに、夢中で王宮を走り出て自分の家《うち》に逃げ帰りましたが、門を這入るとほっと一息安心すると一所に、急に淋しく悲しくなりました。そうして早くお父様やお母様に会おうと思って、家中を探しましたが、家は只一日しか留守にしないのに、ガランとした空家になって、庭には草が茫々と生い茂り、池の水も涸れてしまって、まるで様子が変っています。濃紅姫はこの有様を見て、何だかもう堪らない程悲しくなって来て、思わずそこに泣き倒れようとしますと、不意にうしろから兄様の紅矢が来て抱き止めて、何をそんなに泣いているのだと尋ねました。姫は嬉しさの余り紅矢に獅噛《しが》み付いて――
「あッ。お兄様。お父さまやお母様やそれからあ
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