うもなく、紅矢の死骸を見詰めたまま、呆然《ぼんやり》と突立っていました。そうして独り言のように――
「身体《からだ》が鉄になる
身体が鉄になる。
見た事もない。
聞いた事もない。
悪魔の為業《しわざ》か。
鬼の悪戯か。
不思議。不思議。驚いた驚いた」
と云っておりました。
その中《うち》に東の空はほのぼのと明け渡って、向うの庭の枯れ木立の間から眩しい旭《ひ》の光りが、この室《へや》の中へ一パイに映《さ》し込みました。そうして大理石のように血の気が無くなったまま立ち竦んでいる三人の顔をサッと照しました。けれども三人は瞬《またたき》一つ為《せ》ず、身動き一つ出来ず、只黒光りする鉄の死骸の、虚空を掴んだ恐ろしい姿を、穴の明く程見つめて立っていました。
するとはるか向うの丘の上に在る王宮の中から、美しい音楽の響《ひびき》が、身を切るような霜風《しもかぜ》に連れて吹き込んで来ました。それは今日宮中でこの国から選《よ》り抜いた、美しい賢い少女のお目見得をするという、世にも珍らしい儀式が初まるその前知らせでした。
その時、二人の女中が来て室《へや》の入口で叮嚀に頭を下げました。そ
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