解らぬようにして終いますと、今度はこの都第一の仕立屋へ這入りまして、紅矢の声色を使って、自分は総理大臣の息子の紅矢である。最前馬から落ちて顔に怪我をした上に、大切な着物を汚してしまったのだが、明日《あす》は又王宮に行かねばならぬから、今日の正午《ひる》迄に今一着同じ服と、外套一枚を仕立て上げろ。但し材料《しなもの》や飾りは出来るだけ派手な上等のものにして、鈕《ぼたん》にはこれを附けるようにと云いながら、髪毛《かみのけ》の中から大粒の金剛石《ダイヤモンド》を十二三粒取り出して渡しました。
折よくこの仕立屋の亭主は紅矢の家《うち》へ出入りの者で、紅矢の身体《からだ》の寸法を心得ていて、委細承知致しましたと受け合って、金剛石《ダイヤモンド》を受け取りましたから、美留藻はなおも念を押して、家《うち》中総掛りで屹度間に合わせろと命じて、又馬を飛ばせました。それから帽子屋へ参りまして上等の帽子を、矢張り正午《ひる》迄の約束で誂《あつら》えまして、その飾りにと云って、ここへも大きな金剛石《ダイヤモンド》を一粒渡しました。それから剣屋《つるぎや》へ行って剣を、靴屋へ行って靴を、手袋屋へ行って手袋を、
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