局、純然たる第一種の職業婦人に見える女性でも、その化粧ぶりを見ると、あらかたこの女はと思える事になった。
第一種職業婦人式第二種職業婦人は、かように到る処に居るには居るが、慣れない者には猿猴《えんこう》が月で手に取る方法がわからない。
但、この道の通人を友人に持っていれば訳はない。どこのタイピストはどこの煙草屋のおやじが世話をしている。どこの女店員はどこの桂庵が一手販売だ。あそこの工女は何というゴロツキの縄張りで、どこの缶詰屋で切符(線香?)を売っているなぞと、わけはない。
専門又はデパート式別嬪屋
京橋|木挽《こびき》町の或る大建築の前の缶詰兼洋酒類煙草屋は、震災前、海軍大学その他、高等海員向きの女の世話をするので通人間に知られていた。今もあるかどうか知らぬが、こんな風に職業婦人を紹介する処が、今では東京市中到る処にあると云っていい。どこの工女とか、女店員とか専門のもあれば、お望み次第のデパート式もポツポツある。そこで一度顔なじみになれば、別の専門へ紹介してくれるのもあるそうな。
線香、席料なぞは芸妓と似た組織で、もっと手軽で安値で自由であると思えばいい。勿論、
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