彩《いろど》っているは、実にこうした職業婦人なのである。
「ナアニ、そんなに秘密でもなければ珍らしくもないよ」
と云う人があったら、その人は新東京人のチャキチャキである。それだけ東京人の堕落に対する批判の公平を喪っているものと見ねばならぬ。
白昼街頭の怪しい女のむれ
丸ビルの悪魔式少女団の話は早くも過去の夢になった。
彼女達の重立《おもだ》った者は、数名一団となって或る店に雇われていた。鉛の強いお化粧をコテコテと塗って、青い事務服を着て、店一パイの硝子《ガラス》窓の前に並んでカチャンカチャンとタイプライターを打っていた。その向うに四十代と二十代と二人の好男子が、リュウとした背広を着て、腰をかけて見張っていた。お客はあまりないようであった。
通りかかりの人が大勢、冷たい硝子窓に額や頬を押つけて、そのカチャンカチャンを飽かずに見ていた。
まだこのほかにも丸ビルには、彼女たちと似たようなお化粧ぶりの女がいくらもいた。
否、ここばかりでない。有名な駅の切符売場、郵便局の窓にも、問題の女がチョイチョイ居るのを見た。
銀座の或る菓子屋には、欧州風の部屋着の揃いに、揃いの
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