……」
「Aと同じだね」
「ウン。Xは疑問の事、Yは枕草紙だのあんなものの事、Zは脅迫だの、誘拐だの、泥棒だの、いくらも意味があってわかりにくいんだっさ」
「みんな、君の英語の先生が教えたのかい」
「ウン――まだこんなのを二つも三つも重ねると、まだいろんな面白い事があるけれど、君達が不良になるといけないからって、そう云ってやがったぜ」
「馬鹿にしてらあ。じゃ、今度習ったらいいじゃないか」
「だけど、おれあ彼奴《あいつ》嫌いさ。好色漢《すけべえ》だってえから……」
「誰が?」
「兄貴がそう云ったよ。兄貴はもっと習ったかも知れないけど……君、これを写さないかい」
「ウン、帰ってから写そう、貸し給え」
 二人の少年は立ち上って、塵をハタキながら去った。
 記者はノートを伏せて、彼等が見えなくなるまで見送った。
 あの少年兄弟は教師に誘惑されているらしい――とその時思った――こんなつまらない事を教えてやると云って、生徒を誘惑する先生がよく居るからである。
 こう考えると、アルファベットの秘密も何だかつまらなくなって来た。探偵小説の重大発見か何かのように、あの生徒の話をノートに取ったのが、無暗に
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