気の利いた不良になると、遠く東京郊外の温泉地、遊覧地、海水浴場までも活躍する。但、こんなのには色魔式が多いので、東京市内及付近では、小石川の植物園が何といってもこの式の大中心地である。しかも最高級から最低級まで横行するので、バラックの裏手の午前零時頃は、用事が無ければ通る気になれない位であった。
 その次は井《い》の頭《かしら》で、これはどちらかと云えば高級なのが多いらしい。但、夜は高級か低級か保証の限りでない。根津権現はその又次という順序である。その他大小の公園、神社、仏閣、活動館、芝居小屋、カフェー、飲食店なぞが、色魔式の活躍場所である事は云う迄もない。
 このような不良の活躍ぶりを見ると、社会の欠陥がよくわかる。三千何百の不良を養う東京の社会的欠陥はどれだけに大きいのであろう。

     浅草の商売の弱点

 浅草はいろんな興行物や飲食店、又は半詐欺的の店なぞいう景気商売が多い。
 だからその商売の弱みが多く、不良につけ込まれるところがザラにある。しかし又、それだけ不良に慣れ切っているから、滅多な不良は寄せ付けぬと同時に、不良|除《よ》けの不良を飼っておくような処もある。
 
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