だしこれは処女のみにかぎるよ。又東京のはなしして。ハイチャイ。
それから山口家のニワトリの家内の病気は如何。
大正十三年七月二十七日真昼
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[#地から1字上げ]みつ子から
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はま子君へ
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この手紙を見て、そのお転婆ぶりに驚かぬ人はなかろう。海水浴で若い男に取捲かれて得意になり、女の友達を何子君と呼び、怪しい新語や俗語を振りまわすところ、その見方、考え方等、皆現代式のハネッ返りである。殊に「女は不正なるべし、但《ただし》処女に限る」とか、「不良病|益《ますます》重《おも》る」とかいうあたり、冗談かも知れぬが舌を捲かざるを得ない。果然、一人の不良少年は鎌倉海岸の脱衣場で彼女の袂からこの手紙を盗み取ると、彼女を与《くみ》し易いと見込んだ。仲間と謀《はか》って彼女の居る宏壮な別荘を調査し、魔の爪を磨いていたのを、東京から尾行して来た刑事が引っ捕えたのだという。
少女のラブレター(一)
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お懐しい
芳夫様、お手紙を有難う御座いました。私は、私の胸
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