の淵に落ち込むべく余儀なくしてしまった、と云っても過言でない。
 そうして、この傾向の最も甚だしかったのは震災前の東京であった。
 都会の少年少女は取りわけて敏感で早熟である。就中《なかんずく》東京の少年少女は最も甚だしい。東京人がその敏感と早老を以て誇《ほこり》としているように、少年少女もその早熟と敏感とをプライドとしているかのように見える位である。
 彼等少年少女は逸早くこの世紀……〔以下数行分欠〕……
 性教育の必要はその中から叫ばれ始めた。これは解放教育の結果がよくないのを見て、まだ解放し足りないところまで公開せよ、そうしてあきらめをつけさせろという議論である。
 ところへ過般の大地震が来た。解放も解放……実に驚天動地の解放教育を彼等子女に施した。
  ………連載一回分(二千字前後)欠………

     男女共学と異性の香

 震災後、東京の各学校の大多数は、一種の男女共学を試みねばならなかった。
 焼け出された女の学校が、男学校の放課後を借りて授業を続けた。倒れた学校の男学生が、女学校の校舎を借りて夜学をしたなぞいう例がいくらもあった。
 これがわるかったと警視庁では云う。

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