ここから湧いた。
学校と父兄が生徒に頭が上らぬ
日本人の頭は何等の中心力を持たぬ。「正しい」とか「間違っている」とかいう判断の標準を持たぬ。「善」とか「悪」とかいう言葉よりも、「新しい」とか「古い」とかいう言葉の方がはるかに強い響を与える。
そこへこの世界的不良傾向が流れ込んだからたまらない。
政治、宗教、芸術、教育方面には特に著しくこの傾向が現われた。昇格問題や徴兵猶予、又は無試験入学に関する各種の運動、又は官私立の区別撤廃といったような叫びが起った。
自発的教授法、自由画、自由作文、児童の芸術心を尊重するという童謡、童話劇、児童劇なぞが盛に流行した。何事も子供のためにという子供デーなぞが行われた。「子供を可愛がって下さい」というような標語が珍らし気に街頭で叫ばれた。
それまではまだ無難である。
尋常一年生位が遅刻しても、
「まだ子供ですから」
という理由で叱らない方針の学校が出来た。大抵の不良行為は、「自尊心を傷つける」という理由で咎《とが》めない中学校が出来始めた。
親が子供を学校にやる時代から、子供が学校に行ってやる世の中になりかけて来た。
先生
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