来た。
 彼等偉人たちは、すこし社会的に自由が利くようになると、ドシドシ堕落してしまった。豪《えら》い人間は皆、堕落していい特権があるような顔をして来た。えらいと云われる人間ほど、破倫、不道徳、不正をして来た。
 それを世間の人間は嘆美崇拝した。そうして、そんな事の出来ない人間を蔑《さげす》み笑った。つまらない人間、淋しいみすぼらしい人間として冷笑した。
 そんな堕落――不倫――放蕩――我儘をしたいために、世間の人々は一生懸命に働いているかのように見えた。
 この有様を見た少年少女は、えらいという意味をそんな風に考えるようになった。成功というのは、そんな意味を含んでいるものと思うようになった。日本中の少年少女の人生観の中で、最も意義あり、力あり、光明ある部分は、こうして初めから穢《よご》された。その向上心の大部分は二葉《ふたば》の中《うち》から病毒に感染させられた。
 彼等少年少女の心は暗くならざるを得なかった。その人生に対する煩悶と疑いは、いよいよ深くならねばならなかった。
 今でもそうである――否、もっと甚だしいのである。

     教育に対する少年少女の不平と反感

 一方に、
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