るのは大抵単独の不良少女で、団体的の背景を持たぬのが多いと思う。
若い男性を誘惑する方法も、少年のソレのように念の入った研究や調査なぞしない。或る男学生を一人の不良女学生が狙うのを、ほかの団友が賛助する位の事で、それを団体的行動と心得ている位の事らしい。
しかし、彼女たちが単身少年に接近して誘惑して行く手段は、男のそれと負けない位大胆である。
たとえば電車に乗って、星をつけた少年の前に立つところは、不良少年式とすこしもかわらない。
ところで、チラリと相手の顔へラジオを放射する。先方が注意しない時は、足を踏むか何かしておいて、思い切り恥ずかし気にあやまる。おまけを付けて、二三度も気の毒そうなシナを見せる。引続きラジオを放射する。その放射の反応具合で相手の真実程度が大抵わかる。
第一日はそれ位にして、別れがけに特別な振幅を含んだお辞儀をする。しかも成るべく気品を見せながら、依々《いい》たり恋々たる風情で袂を別《わか》つ。
しかしまだ呆れてはいけない。
少年誘惑第二日
第二日も同じ頃、同じ電車に乗って、同じ相手の前に立つ。但、今度は多少心安くなった風で、程よく気軽に振舞う。ニッコリ位する……。
……応ずる…………。
これを三日か四日位まで続けて、相手の学生が何となく自分の乗っている事を期待している風情に見えて来たら、ここで一日二日スッポカシを喰わせる。
これを「手紙デー」、又は「デー」という。
相手の少年が、「今日はあの女学生が乗らなかったな」と思っている矢先へ手紙が届く。
「女の癖にぶしつけなと思召《おぼしめ》すかも知れませんが、ほかにこの苦しみを洩らす道が一つもありませんから……」
「只愛する……というお言葉だけで妾は……」
「こんな事を申し上げましたからには、妾はもうあなたにお眼にかかられませぬ。お眼にかかれば、この悩みがいよいよ堪えられなくなるばかりで御座いますから……ああ神様……」
とか何とか書いてある。
本当にする少年は本当にする。そうしていろいろ悩み始める。
こうしておいて、早いので二三日、長いので一二週間の後、如何にも偶然のように電車の中で逢う。但、少年の学校の帰りがけでなければならぬ。
この時が成功不成功の分れ目だそうで、又一番|六ヶ《むずか》しい技巧を要するのだそうな。
……真赤になって、うつむいて、ハンケ
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