なろうか、自分の才能がどんな仕事に向くだろうかという事を発見し難く、モヤクヤと困《くる》しんでいる。
 十人十色の才能を見分ける事をせずに、一列一体の学課を詰め込む主義の今の教育法は、一層この悩みを深刻にする。猛烈な成績の競争と試験制度は、彼等を神経衰弱になるまでいじめ上げる。
 その結果、彼等はいよいよ実社会に対する気弱さを増す。そうして遂に自暴自棄に陥る。
 或る一つの天才しか持たぬ青年、又は生れ付き学問に不向きなタチの少年は、いつも成績不良の汚名を受けて、学校や家庭から冷遇される。その果《はて》は矢張り自暴自棄で、踵《くびす》を連ねて不良の群に入る。
 これは云い古された議論である。寧《むし》ろ記者の受売りである。
 併し、現在の東京と対照させると、この議論は決して古いものでなくなる。却て新しい、高潮さるべき実際問題となって来る。
 現在の東京に見る見る増加して行く極端な対照――非常な華やかな生活と恐ろしくミジメな生活――遣り切れぬ享楽気分と堪え切れぬ生存競争――その中にニジミ流るる近代思想は、彼等少年の「勉強」に対する頭の集中力を攪乱し、その「誘惑」に対する抵抗力を弱むべく、日に日に新しい深刻味を加えて来つつある。

     少女の悩みから

 少女の悩みは又違う。
 どうせお嫁に行かねばならぬが、その婿は自分で撰むわけに行かぬ場合が多い。そうして、いい処に行くために、面白くも何ともない学校の成績を挙げねばならぬ。ジッと音《おと》なしくしていなければならぬ。
 ――家事を習って――お裁縫を習って――作法を習って――お化粧をして――そうしてお婿さんの趣味と一致せねばならぬ――何でも盲従しなければならぬ――。
 女なんて、そんなつまらないものかしら。
 そんなら独立するとすれば――職業婦人にならねばならぬ。内的にあらゆる誘惑と戦って――外的には男子と実力の競争をして――そんな事が妾《わたし》に出来るか知ら――妾の趣味、智識の内容にそんなねうちがあるのか知ら――。
 今の東京はそんな悩みを刺戟する最新、最鋭の材料に満ち満ちている。
 こんな悩みが深ければ深いだけ、それだけ少女の頭に湧く空想や妄想が殖える。次第にセンチメンタルになり、神経衰弱になり、刹那の感興に涙ぐんだり狂喜したりする傾向が極端になる。そうして欺され易く、感化され易くなる。又は悩み抜いた揚句が、投
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