でも作れる。
 中には、如何《いか》がわしい絵や文句が透かしになっているもの、又は内側に印刷してあるのもある。二重袋の外を水色、内部を紅色にして挑発気分を見せたり、外を灰色に、中を黒にして病的思想を象徴したりしているのもある。
 切手を貼る処を破線(……)で囲んで、中に七号位の活字で恋の格言、投げやりな思想、耽溺気分の歌なぞを刷り込んだのは殊に眼新しい。
「ちござくら、そばによりそう、うばざくら、ともにうきよの、はるをこそおしめ」
「みだれなと、いとあさましく、くくられし、はぎなぞに、みを、よそえては、なく」
「少年の恋は、禿頭のように捕えにくい、ツルツルして毛が無いから」
 なぞいうのがある。呆れ返っても足りない。

     冒険式文通

 こんな手紙を郵便で出してはけんのんというので、秘密に渡す方法が又様々に研究されている。あまり詳しく書くと方法を教える事になるから差し控えるが、棒に捲いて銀紙を冠せてチョコレートに見せかけたもの、ヘアピンにナイフで彫り込んだものなぞいう念の入った手紙を、警察に引かれた少年少女が持っていたという。中には好んで奇想天外の手段を執る者も殖えて来たらしいが、大方矢張り探偵小説や活動写真の影響であろう。
 一例を挙げると、女学校の廊下にかかった先生の帽子に文《ふみ》を挟んで、女学生に取らした私立専門学校の生徒が居る。
 その生徒は、約束の時間に普通の紳士の服装《なり》をして、課業中の人の居ない廊下に這入った。帽子を探すふりをして、右から何番目かの茶の中折れに文を入れた。
 放課後までその帽子に手を触れる者は無い筈と、安心して帰ったら、豈計《あにはか》らんや、その帽子の先生が急用で自宅に帰ると、発見して、中の文句まで読んでしまった。そのまま封を直して帽子に入れて、急いで学校に行って、旧《もと》の処にかけておいて、放課後調べて見ると無くなっていた。
 その翌る日、その先生は又|旧《もと》の処に自分の帽子を掛けて、今度は見張りをつけておいたら、昨日《きのう》の男学生が返事を受け取りに来たから直ぐに取って押えた。何とか彼《か》とか弁解をする奴を相手の女学生と突合わせると、流石《さすが》に両方共一度に屁古垂《へこた》れてしまった。そこで厳重に将来を戒めて家庭に引渡した。
「活動の影響だ。人を馬鹿にしている」
 と、その先生は素敵に憤慨して記者にこ
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