てボンヤリと明かし暮らす。
親はそんなことに気付かぬ。
ルパシカを着る息子
たとえば息子がルパシカを着て喜んでいるとする。
親は、単純な物好きか、又は社会主義にカブレたのかと思って叱り付ける。
ところが見当違いである。本人は物好きでも社会主義者でもない。
近頃の東京の若い女、殊に自堕落な気分に浸《ひた》る女の中には、そんな風な男を好く国もない。家もない。思想的に日本よりもはるかに広く思われる露西亜《ロシア》、政治上の最高権威者が労働者と一緒に淫売買いに行く国、婦人子供国有論が生れる国――そんな国にあこがれているために日本の社会から虐げられている青白い若い男……そんな男は小説を読む淫売なぞに特にもてはやされることをその息子は知っている。だからそんな風をするのだ。
……と知ったら、親はどれ位なげくであろう。
まだある。
机にかける布《ぬの》切り子やセルロイドの筆立て、万年ペンのクリップ、風呂敷、靴にまで現われている趣味を通じて、その子女が世紀末的思想から生れた頽廃趣味に陥っていることを見破り得る親は先ずあるまい。
その持っているノートの黒い小さなゴムの栞《しおり》や、万年筆用の黒いクリップが、ナイフや針で文字を彫って、異性の家の壁や約束の立ち木やに隠して、秘密通信をやるのに便利な事を知っている監督者も先ずあるまい。
男のような字を書く娘、女のような字を書く息子が、変名を使って異性と通信しているに違いない事を看破し得る父兄もあまりあるまいと思う。
まだまだ驚く事がある。
大人に対する反逆
近頃の少女はハンケチを畳んで、胸の肌に直接に押し当てている。又、男の子は帽子の中にハンケチを入れて冠っている。
それは、少女はお乳をふくらすため、又、男の子は香水を湿《しめ》して入れておくためと思っていたら大違いだと、一人の不良少年が笑った。
そんなら交換して異性の香《におい》を偲ぶためかときいたら、
「まあ、そんなところでしょう。ハハハハ」
と又笑った。その笑い方が変だったから、根掘り葉掘り尋ねたら、彼は一種皮肉な、イヤな笑い方をしながら、こう答えた。
「それあ云ってもよござんすがね、あなた方に必要のない事なんです……何故ってあなた方は皆、情欲の方のブルジョアなんでしょう。奥さんもおなりになれば、芸者買いも出来る。だから必要はな
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