といったような思想を基調としているであろうか。
市政は整然と行われているであろうか。
市街建築や交通機関は、理想ある統一の下に整備されつつあるであろうか。
市民の娯楽機関は、果して健全に発達しつつあるであろうか。
風俗は新日本の流行の中心たるに恥じないものであろうか。
犯罪の数は、又不良少年少女の数は震災後減ったであろうか。
各種の商売は合理的に繁昌しているであろうか。
そうして復興の意義は、一般市民に正しく理解され、達成されつつあるであろうか。
記者は遺憾ながら、これ等《ら》の質問に対して一つも満足な答えをすることは出来ない。唯一言「否」という言葉で片付けてしまいたいが、それすら出来ない程に東京の現在は意外な状態にあるのである。
記者はこの稿を発表する前に幾度《いくたび》か躊躇《ちゅうちょ》した。
これを発表するのは、新しい東京の前途に希望を持つ人々に対して、あまりに残忍な仕打ちであるばかりでない。この中にある醜い事実や例証やが、さなきだに東京を唯一無上の都市と思っている地方の人々に悪い影響を与えはしまいか、又はまだ東京を知らぬ健全な地方の人々の頭を刺戟して、「東
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