としか思えないのである。しかもこのお坊ちゃんと腰弁の東京に対する「遺憾」を裏書するものが、かくの如く夥《おびただ》しく、到る処の街頭に満ち満ちているのである。
記者は、白日青天の下に此《かく》の如く無残に曝《さら》し出されている東京市政の破綻を見て、無限の感慨に打たれざるを得なかった。
これは決してひとごと[#「ひとごと」に傍点]でない。日本中の市という市は悉く自治制である。その自治制の欠点(うま味[#「うま味」に傍点])を最も多量に持っているのが東京市なので、或る意味から見れば流石は日本の模範都市と云えるであろう。同時に日本全国の市政にあずかる人々は、この意味で東京を模範としようと努力していないとも限らぬであろう。研究に値することは無論である。
先年、英京|倫敦《ロンドン》が大火事で焼き払われたあと、時の当局者は人類文化発展の将来を見越し、世界通商交通の前途に鑑み、将来の世界的都市として差支えないだけの市街にすべく、大英断を以て新たに都市計画を立て、今までの町割りに構わずにドシドシ理想的の図面を引きはじめた。
これを見て驚いたのは倫敦《ロンドン》市中の富豪連であった。そんなこ
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