ためを思って云うのです。略式ですが結婚式の調度も持って来ています。ここですぐに式をお挙げになってはどうですか。あとの手続や何かはすっかりこちらでやって上げます。どうです。善は急げです。今のところ、貴女の御注文にはまるお方《かた》はこの方しかありません」
 とか何とか媒介所の男が無茶苦茶に勧めた。
  ………連載一回分(二千字前後)欠………

     東京の犯罪地帯

 東京市中でほかの犯罪はみんな殖えているのに、殺人傷害だの、強盗だのいう荒っぽいところが枕を並べて減少しているのも面白い。
 震災後の東京は一時無警察に近い状態となって、寂寥《せきりょう》たるバラック街に強盗が盛に横行した。このままで行ったならば、日本の首都は今に大晦日《おおみそか》の北京のようになりはしまいかと思われたが、案に相違して一時の現象で済んだのは芽出度い。
 こんな風に荒っぽい犯罪が減った原因については、いろんな見方がある。第一は震災後の東京市民が一体に文化的――言葉を換えて云えば理智的に気が弱くなった事、第二には一時減少した人間がその後《ご》急に殖えて、家数が建込んだ事、第三は復興気分で下層社会の景気がよく
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