姫はあまりの恐ろしさにあとしざりしました。
けれどもその時に、又姫がうしろをふりむいて見ますと、鉄のお城の方ではあっちにもキラリ、こっちにもキラリと光るものが見えます。それはみんな短刀で、それがだんだんこちらの方へやって来るようです。
姫は、どうしてもこの鉄の塔の中に逃げこまなければ、ほかにかくれるところが無くなってしまいました。
姫は泣くには泣かれず、逃げるには逃げられません。前には蜘蛛が待っていますし、うしろからは短刀を持った人が追っかけて来るのです。姫はもう恐ろしくて悲しくて、ブルブルふるえながら立っておりました。
そうすると、はるかに高い高い塔の上から美しい唱歌の声が聞こえて来ました。
「きれいなきれいなお月様
くうろい雲にかくれても、
泣くな、なげくな、悲しむな
やがて出て来る時がある
可愛い可愛いお姫様
大きな蜘蛛にとられても
泣くな、なげくな、こわがるな
いつか助かる時がある」
それをきいたオシャベリ姫はすぐに思い切って、鉄の塔の入り口一パイに張ってある蜘蛛の網を眼がけて飛びこみました。
ところが、その蜘蛛の網はたいそう丈夫な網で、姫の力では
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