私がここまで荷《かつ》いで来て解いて上げたのです……サアこれで私のお話はおしまいです。今度はあなたがお話しをなさる番です」
「え……私がお話をする番ですって?……」
「そうです。いったいあなたはどうしてこの国へお出でになったのですか? あなたはいったいどこの国のおかたですか?」
姫はこう尋ねられますと、急に恥かしくなって顔を真赤にしましたけれども、自分の生命《いのち》を助けられた人に隠してはいけないと思いましたから、初めから何もかもすっかりお話をしました。
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……自分がオシャベリ姫と云われたわけ……
……短刀と蜘蛛の夢を見たこと……
……それを二人のお付の女中に話したら「それは今によいことがある夢だ」と云ったこと……
……それをお父様の王様とお母様のお妃にお話しをしたけれども、二人の女中が後でそんなお話はきかぬと嘘をついたこと……
……そのためにお父様の王様がお憤《おこ》りになって、姫は石の牢屋に入れられたこと……
……それから猫の案内で雲雀の国から蛙の国をまわって、どこでもオシャベリのために非道い目に合って、やっとこの国まで逃げて来たこと……
……それから王様とお妃様に会った話……御馳走をたべているうちにオシャベリをして殺されようとした話……それから逃げまわってこの鉄の塔のところまで来た話……
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と、次から次へすっかりお話し申して聞かせました。
聴いていた王子はビックリしたり、感心したり、笑ったりして夢中になって喜んでききました。そうしておしまいに、
「ああ……ああ、何という面白いお話でしょう。私は生れて初めて本当に面白いお話をききました。そうして生れて初めて本当にこんなに思うさま人間同士に声を出してお話をしました。けれども、あなたのお話の中にたった一つわからないことがあります」
「まあ、それは何ですか」
「それはその二人の女中さんです。あなたの国の人はお話はするでしょうけれども、嘘は云わないでしょう」
「ええ、嘘を云うものは一人もおりません」
「それに何だってあなたのお付の女中は嘘を云ったのでしょう。あなたから短刀と蜘蛛のお話をきいていながら、なぜそれをきかないなぞ云って、あなたのお父様を怒らして、あなたを石の牢屋へ入れさせたのでしょう」
「そうですわねえ。私は今でもそれを不思議と思っているのですよ。私の二人の
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