先生の眼玉に
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)白い鬚《ひげ》を
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 子供が大ぜい遊んでいるところに雪がふって来ました。
「ヤアイヤアイ 雪がふって来た
 雪降れ ウント降れ
 塩になれ 砂糖になれ」
 とみんながよろこびました。
「砂糖になったらどうするか」
 と大きな声がきこえましたので、ビックリしてその方を見ますと、白い鬚《ひげ》を生やして、白い着物を着て、白い帽子を冠って、長いすきとおった氷柱《つらら》のような杖を持ったお爺さんが立っておりました。
 子供達はおどろいてそのお爺さんの顔を見ていますと、お爺さんはニコニコ笑いながらも一度、
「砂糖になったら何にするのか」
 と子供たちに聞きました。
「お餅につけてたべる」
 と三吉が答えました。
「お婆さんに嘗《な》めさせる」
 と忠太郎が言いました。
「お庭の蜜蜂にやる」
 と玉子さんが言いました。
 お爺さんはさもさも嬉しそうに、
「感心感心。お前たちはみんないい児だ。それじゃ塩になったらどうするかな」
 と尋ねました。
「先生の眼玉にすり込んでやる」
 と最前からだまっていた悪太
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