からぐら》が見えました。
その宝庫《たからぐら》には強そうな兵隊がチャンと番をしておりまして、その庫《くら》の奥にある大きな鉄の宝箱の中に立派な鉄砲が一梃ちゃんと立てかけてありました。
リイはそれを見つけると喜んですぐに、
「マム」
と云いますと、もうその宝庫《たからぐら》の中の宝箱の中の鉄砲のところへ来てしまいましたから、リイはその鉄砲を肩にかつぎました。
それから今度は次の兄さんのサア王のお城の方を向いて、宝物の刀はどこにあるだろうと遠眼鏡をのぞきながら、
「アム」
と云いますと、やっぱりそのお城の宝庫《たからぐら》の中の宝箱の中にチャンと蔵《しま》ってありましたから、すぐに、
「マム」
と云うと、そこへ飛んで行ってその刀の紐を腰に結びつけました。
リイはそれからアア王とサア王の国の境目《さかいめ》にある一番高い山の上に遠眼鏡の魔法で飛んで行って、そこの岩に腰をかけて、遠眼鏡で二人の兄さんのお城のようすを見ていました。
二人の兄さんはそんなことは知りません。両方とも有りたけの兵隊をみんな集めて戦《いくさ》の用意をしてしまいますと、家来を呼んで、
「あの宝の鉄砲を持って来い」
「あの宝の刀を持って来い」
と云いつけました。
両方の家来は宝庫《たからぐら》の中の宝の箱を開いて見ますと、どちらも宝物が無くなっていますので、肝を潰して、
「お宝物の鉄砲が無くなっております」
「お宝物の刀が無くなっております」
と青くなって両方の王様に言いました。
両方の王様も青くなってしまいました。それは大変と、てんでに宝庫に駈け付けて調べて見ますと、番兵も庫《くら》の鍵もチャンとしていながら、中の刀と鉄砲だけ無くなっています。そうしてもとの鉄砲と刀とあったところに、どちらにも、
「お宝物はリイがいただいてまいりました。リイは国の境目《さかいめ》の高い山の上にお待ちしております」
と書いた紙片が置いてありました。
両方の兄さんたちは憤《おこ》るまいことか、
「さては弟のリイは泥棒の名人になったと見える。あの高い山を取り巻いて、リイを引っ捕えて宝物を取りもどせ」
と云うので、両方の国の兵隊が両方からその山をぐるりと取り巻いて、ズンズン攻めのぼって来ました。
ところがその山の絶頂まで攻めのぼって来るうちにすっかり日が暮れてしまいましたので、二人の兄さんは両方
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