くらみました。それから、二人ではとても食べ切れぬ程の珍らしい御馳走をいただきました。それから、この国中の踊りの名人の舞踏を見せてもらいました。
 とうとうおしまいには王様も堪《たま》らなくなったとみえて、
「久し振りだからおれも一つ踊ろう」
 と飛び出して踊り出しました。
 その時王様はこう云って唄いました。
 ヒイラ、フウラ、ミイラよ
 ミイラの王様お眼ざめだ
 赤い青いおべべ着て
 黒いあたまをふり立てて
 はねたり飛んだりまわったり
 五ついつまでいつまでも
 むかしのまんまのひとおどり
 なんでもかんでも無我夢中
 やめずにとめずに九《ここの》とう
 とうとう日が暮れ夜が明けて
 いつまで経《た》っても松の内
 花子さんも羽子板の姉さんも夢中になって見ておりますと、王様の踊りはだんだんはげしくなって、次第次第に高く飛び上って、とうとう大広間の天井を突《つき》破って、虚空はるかに飛び上って、どこへ行ったか見えなくなってしまいました。
 ハッと思って気がつきますと、夜が明けて、花子さんは矢張り寝床の中にいて、羽子と羽子板をしっかりと抱いているのでした。
 羽子板の姉さんの頬はいつの
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