後にも引き続いて起こるかと思われた海底地震が、予想を裏切って一向に起こらなかった。また余震が全然観測されなかった。
「変だね、あれだけの顕著な地震に余震がないなんて……」
と水戸は呟いた。
「余震がないということはそんなに怪しむことかね」
ドレゴがパイプを口からもぎ取って、目を剥《む》いた。
「そうだろう。地震には余震が付きものなんだから……」
「そうかね。僕には、ぴんと来ないがねえ。何かもっと目に見える派手な事件でも、起こって呉《く》れなくちゃ、僕には異常現象たることが諒解できない。ああ、とにかく草臥《くたび》れたよ。外へ出て、冷い潮風に当たって来ようや。君もちょっと出ないか」
ドレゴが誘ったので、水戸記者もそれに応じて、この無電室を出た。
縹渺《ひょうびょう》たる大西洋は、けろりんかんとしていた。どこに海底地震があったという風だった。
「護衛艦たちは、いやに遠くへ離れちまったねえ、水戸君」
「うん、観測の邪魔にならないように、本船の間に相当の距離を置いたんだろう」
「そうかなあ。あれは駆逐艦らしいが、いい格好だねえ。おや、どうしたッ。変だぞ、あの艦は……」
ドレゴの声が驚
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