して行くうちに、三十分ほど時間が経ち、そこで小休止となった。水戸は、潜水服の中に温めてあった牛乳と甘いコーヒーを、ゴム管で吸った。
 それからまた前進が始まった、すると間もなくかなり高い丘陵の下に出た。その丘陵をのぼり切ったとき、突然右隊から「警戒! 停れ」との信号があった。
 何事かと、左隊の三名が潜水兜をくっつけ合って意見交換を始めたとき、右隊から誰かが近寄ってきた。
「おお、ホーテンス」
 水戸は彼を認めて、名を呼んだ。そのホーテンスは途中急いだと見え、聞きながら水中電話機から声を出した。
「大警戒を要するのだ。前方百メートルのところに、海底からとび出したものがある」
「海底からとび出したもの?」
「そうだ。その正体はまだ分からぬ。沈没している船かもしれない。或いは岩かもしれない。とにかくこれから油断をしないで前進するように、との博士の注意だ」

  海底にわだかまるもの

 ホーテンスが右隊のほうへ帰ってしまうと、左隊の三名は、前よりも一層互いに身体を寄り合って、そろそろと軟泥の上を前進していった。
(沈没船か、岩か?)
 岩なら別に問題はない筈。博士が警告したわけは、それが沈
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